最大の試練を越え 希望の旭日を!
ロシアの画家アイヴァゾフスキー

芸術の秋企画「絵画は語る」。今回は19世紀ロシアの画家アイヴァゾフスキーの「第九の怒濤」です。古来、“嵐の波に周期があり、9番目に押し寄せる大波こそ最も恐ろしい”とする船乗りの言い伝えを踏まえ、苦難に打ち勝つ勇気が描かれています。東京富士美術館で展覧されたこの絵画を、創立者の池田先生ご夫妻が鑑賞したのは、2003年の10月31日。その感動を先生は長編詩「『第九の怒濤』を観て」につづりました。詩の抜粋を心に詠じながら、ご鑑賞ください。

「第九の怒濤」とは
最も強大で
最も峻厳とされる
波浪のことである。
だからこそ
この最大の試練を
耐え抜き
乗り切ったならば
大いなる活路が
決然として
開かれゆくのだ。
そして
まさに今が
奮迅の力を振り絞って
怒濤を乗り越えてゆく
その瞬間なのだ。
いよいよ最期か。
いや
生き抜くのだ!
泳ぎ切るのだ!
大波は観念しろと
怒り狂うが
この迫害に
私は
断じて降参せぬ!
ここで
泳ぎ切らなかったならば
一生涯
屈辱の波が
自身の中に渦巻くからだ。
荒波は高くなる。
無限に高くなる。
この波浪を乗り越え
勝ちゆけば
私は
誰にも認められなくとも
自分で自分を讃えゆく
人生の大英雄と輝くのだ。

「開目抄」には
悪世末法にあって
難の襲い来る様相を
「波に波をたたみ」と
仰せである。
その波を
一つまた一つ
断固として
堂々と
勝ち越えてこそ
広宣流布なのだ。
見給え!
無数の苦難と戦い
疲れ果てた人々の
彼方には
人生の希望が満々とした
旭日が輝き昇り
大天空を
照らし光らせている。
熱い嬉し涙が
込み上げる。
そして
悲しみを繫ぎ合わせた
怒濤を
貪り見つめる彼の目に
豊かな
永遠に変わらぬ
緑の陸が見えた。
彼は勝った!
勝ったのだ!
若き彼の胸に
栄光の太陽が昇った。
眺め終わって
妻は
私の顔を静かに見た。
「あなたの人生と
同じですね」

「荒れ狂う
怒濤に向かいて
弛まぬは
日の本 救う
若人なりけり」
十九歳のときの
わが詩である。
誰人たりとも
人間は!
人間は必ず!
その人間の勇気には
希望と平和の朝が
待っているのだ!
君よ
再び決心して
立ち上がれ!
そこには必ず
光の合図の
勝利の太陽が
待っているからだ!
名字の言 「第九の怒濤」に込められたメッセージ
本紙の企画「絵画は語る」で、ロシアの画家アイヴァゾフスキーの傑作「第九の怒濤」が紹介された(10月26日付3面)▼第九の怒濤とは、嵐の海の中で最も巨大で恐ろしい破壊的な波とされる。ロシア文学の名作『戦争と平和』にも「ちょうど船をも破壊する最後の、第九の波のごとく、最後の抗いがたい大波」(望月哲男訳)と書いてある▼イギリスの風景画家ターナーの「難破船」は自然と人間の戦いを描いた「第九の怒濤」と構図が極めて類似する作品だが、両者には決定的な違いがある。ロシア美術研究家の山口恭子さんによれば、人間を自然の猛威の前になすすべもない存在と描いたターナーに対し、「第九の怒濤」には自然と勇敢に戦い、最後は勝つという希望が輝き、歓喜の賛歌が響き渡る、と(「海の詩人アイヴァゾフスキー」)▼池田先生は長編詩「『第九の怒濤』を観て」でうたった。「信念のある彼は/受難も受苦も/必ずや人間は/乗り越えゆく/使命と力を/持っていることを/教えたかった」「乗り越えゆくのだ/すべてを!/自身の前途の苦難を!/君よ/あなたよ/断じて/乗り越えていってくれ給え!」▼波浪は障害にあうごとに、その頑固の度を増す――わが人生も、かくありたい。(川)


