11月の競技会で次々と自己ベストを更新
新春の風物詩である箱根駅伝はあす、出場する全21チームのエントリーメンバー16人が発表される。5度目の挑戦を目前に控え、上り調子の創価大学駅伝部に迫った。

11月に入り、創価大学の選手たちは各種競技会で好記録を連発している。
20日の「第15回早稲田大学競技会」で1万メートルに出場した嶋津雄大選手(4年)は28分14秒23を記録。自己ベストをマークし、1万メートルの創大日本人歴代最高記録を更新した。

27日の「2021八王子ロングディスタンス」では、フィリップ・ムルワ選手(3年)が1万メートルを27分35秒29で走破。14日の「第292回日本体育大学長距離競技会」の5000メートル(13分29秒42)に続き、創大の歴代最高タイムをたたき出した。
翌28日の「第207回東海大学長距離競技会」の1万メートルでは、濱野将基選手(同)が自己ベストを約1分も縮める28分37秒06でゴール。さらに、緒方貴典選手(同)、葛西潤選手(同)、新家裕太郎選手(同)、桑田大輔選手(2年)、吉田凌選手(1年)が28分50秒切りを達成するなど、計14人が自己記録を更新した。5000メートルでは、中武泰希選手ら4年生が自己ベストを塗り替え、最上級生の意地を見せた。

その中で、特にチームに勢いを与えているのが葛西選手の復帰だ。前回の箱根駅伝後、長くけがに苦しんだが、約10カ月半ぶりのレースとなった20日の早稲田大学競技会でも5000メートルで自己ベストに近いタイムを記録。完全復活を印象づけた。
質の高い練習で厚くなった選手層
調子を上げてきたチームの様子に、榎木和貴監督は「これまでで最も質の高い練習に取り組み、トラックでも結果が出せるようになり、前回以上に選手層の厚みが出てきました」と手応えを語る。
しかし、ここに至るまでの道のりは決して順風満帆ではなかった。
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「獅子奮迅――ストライプインパクト」とのスローガンを掲げ、「大学三大駅伝の全てで3位以上」を目標にスタートした今シーズン。
榎木監督は「箱根駅伝の準優勝チーム」の肩書にふさわしい、どんな舞台でも自分の実力を最大に発揮できるための速さ、環境適応力、精神力などを総合した「強さ」を培おうと訴えた。選手たちもそれを理解し、トレーニングに励んだ。
だが、三大駅伝の一つ目となる全日本大学駅伝の予選会(6月)は“まさか”の14位に終わり、悲願だった本戦初出場を逃した。

三上雄太主将(4年)は、当時の状況をこう振り返る。
「練習の量や質は確実に高くなっていましたが、実力が追い付かず、気持ちだけが空回りしていました。敗戦を機に皆で何度もミーティングを重ね、自分たちのやるべきことを確認して再出発しました」
捲土重来を期して迎えた鍛えの夏。合宿シーズンの8月は、月間走行距離を「900キロ」に設定し、全員が限界突破に挑んだ。シューズは、スピードが出る「厚底」ではなく「薄底」を使用。“強い脚”をつくることを徹底した。
4年生をリーダーとする「縦割り班」も例年以上に機能させた。嶋津選手は周囲の底上げを強く意識。「自分の実力アップだけでなく、チームのために今まで以上に声を出し、時には仲間の背中を押してゴール地点を目指すなど、一緒に成長できるよう努めました」と述懐する。
こうした切磋琢磨により、皆が「昨年よりも充実した合宿になった」と口をそろえ、徐々にチームは自信と誇りを取り戻していった。

10月、三大駅伝の二つ目となる出雲駅伝に初出場し、7位の結果に。
1区を走った緒方選手は「強豪校と競い合い、自分の実力や課題が分かったことは大きかった」と、大舞台を経験できた手応えを強調。榎木監督も、ムルワ選手が3区で順位を2位まで押し上げたことを踏まえ、「最低限の結果は残せた」と前向きに捉えた。
上昇気流に乗ったチームでは、選手を支えるメンバーの存在も光る。
けがによって7月下旬にサポートメンバーへの転向を決断した麻生樹さん(4年)は言う。
「選手として箱根を走れないことは悔しい。でも、それよりも、総合3位以上を目指す部の力になりたいという思いの方が強い。自分にできることを全うしようと決意しました」
これまで、自分と同じように悔し涙をのんでサポートに回った先輩たちが、陰に陽にチームに貢献する姿を目の当たりにしてきた。
4年間、共に汗を流してきたからこそ分かる「選手目線」のアドバイスを送り、仲間を鼓舞し続ける。

「常に一歩先へ」という伝統精神を実践する8人のマネジャーのチームワークも抜群だ。
その要である主務の吉田正城さん(2年)は、選手と監督・スタッフをつなぐパイプ役を担いながら、各大会へのエントリーやスケジュール管理などの多様な業務をこなす。「『大勢の人を幸せにしたい』という自分の夢も懸けて、主務としてチームを勝利に導きたい」と意気込む。
5度目の箱根へ
努力と苦労を飛躍のバネに変え、本番に照準を合わせてきた創大駅伝部。
他の大学も確実にレベルアップしているが、有力校と競り合えるだけの戦力が整ってきたことは間違いない。今回も創大を「ダークホース」と見るメディアや専門家もいる。
こうした周囲の評価にも浮き足立つことなく、持てる力を出し切ることだけに集中し、チームはきょうから最終合宿に入る。
今月2日には創立者・池田先生が創大キャンパスへ。近接地に建設中の駅伝部の新「学生寮」を視察したニュースが飛び込み、喜びが広がっている。
榎木監督は語る。
「応援してくださる全ての方々への感謝を胸に、箱根という舞台を楽しみながら、創価の赤と青の『ストライプ』のユニホームがテレビに多く映し出されるよう、全力を尽くします」
日本中に歓喜と感動の「インパクト(=衝撃)」を残した“創価旋風”から間もなく1年。明年1月2日の号砲まで、あと24日である。


