
日本で「百獣の王」といえばライオンだが、お隣の中国では虎だという。今年の干支である「寅」は「寅虎」とも書く▼春秋戦国時代の思想書『韓非子』が出典のことわざに「虎に翼」がある。地走るものの王たる虎に空飛ぶ翼を与えると、強い者にさらに力が加わって天下無敵になるという意味だ。それゆえ勇猛な将軍は「虎将」と称された。小説『三国志演義』で「五虎将軍」と呼ばれたのは関羽、張飛、馬超、黄忠、趙雲の5人である▼御書には、有名な「石虎将軍」の故事が引かれている。虎に親を殺された将軍・李広が、その虎を見つけて、仇討ちの一念を込めて一矢を放つ。矢は深々と刺さったが、仕留めたと思った虎は、実は虎に似た石だった。その後、何度も矢を放つが再びは刺さらない。つまり、この故事は「強き一念」の大切さを示している▼御聖訓に「法華経の剣は、信心のけなげなる人こそ用いることなれ。鬼にかなぼうたるべし」(新1633・全1124)と。中国語版の御書では「鬼にかなぼう」が「虎に翼」と訳される▼強い信心の人が、法華経のままに実践を貫けば、どんな障魔をも打ち破れる。無敵の剣を得たようなものである。信心とは勇気の異名。強盛な祈りで進む限り、恐れるものはない。(恭)

