
6日に開幕する全国高校野球選手権大会(甲子園球場)の開会式で、全国的にも珍しい女子の主将が入場行進の先導役を務める。兵庫県立三田西陵高野球部の東尾凛さん(17)(3年)。入部当初からコロナ禍に悩まされた今の3年生のうち、縁の下でチームを支えた部員らを代表して選ばれた。「周囲のおかげで野球をやり切ることができた」と感謝の思いを胸に、5日のリハーサルに臨んだ。
開会式のリハーサルで、入場行進の先導役を務める東尾凜さん(5日午前、兵庫県西宮市の甲子園球場で)=守屋由子撮影
兄の影響で小学2年で兵庫県三田市の少年野球クラブに入団。中学でも軟式野球部に所属した。三田西陵高ではマネジャー志望だったが、実力を知る他校の監督から、「すごい選手が入りましたね」と聞いた上野敏史監督(40)の誘いもあり、選手として入部した。
日本高校野球連盟の規定では、女子選手の公式戦出場は認められていないが、練習試合では捕手としてプレー。遠投85メートルの強肩を武器に相手走者の二盗を封じ、打撃では3割以上の打率を誇った。物おじしない性格で発言力があり、昨夏、主将になった。
入部してすぐに選手権大会が中止になるなど、コロナ禍に 翻弄 されてきたが、主将となった直後にも、緊急事態宣言で1か月練習ができなかった。それでも、「このメンバーで勝ちたいやん。練習から元気を出していこう」と仲間を鼓舞。全体練習が制限された時には「自分ができることをやっておくように」と声をかけ、自身も自主練習を続けた。
今夏の兵庫大会では試合前のノッカーを務めたが初戦で敗退した。その後、全国高校女子硬式野球選手権大会に連合チームの一員として出場を予定していたところ、甲子園大会での入場行進の先導役という思ってもいない依頼が届いた。主催者は「入部以来、困難な環境にあった3年生の中でも、スポットライトの当たる機会がない部員らに活躍の場を用意したかった」といい、東尾さんは「つらいときも野球を続けてよかった」と喜んだ。
東尾さんは「コロナ禍の日々は嫌だったが、悪いことばかりでもなかった」という。難しい環境のなか、何とか練習試合を組もうとしてくれた上野監督や、日々サポートしてくれた両親に「感謝の気持ちが芽生えるようになったから」だ。
甲子園球場は、野球を始めた頃から10回以上、高校野球を観戦した憧れの場所だ。「マネジャーや控えの選手も一生懸命チームをもり立ててきた。全国のそうした人たちの思いも背負い、堂々と歩きたい」と本番を心待ちにしている。

