〈箱根駅伝〉 創価大学が底力の総合8位

4年連続でシード権 往路10位、復路4位

葛西選手が7区の区間賞

観衆の拍手を受けながら、力を出し尽くしてゴールテープを切る10区・石丸選手。仲間の汗が染み込んだ魂のタスキを、東京・大手町までつないだ(3日)

7区の区間賞に輝いた葛西選手㊧。直前までけがに苦しみながら、渾身の走りでチームに勢いをもたらした(同)

 第99回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)が2、3日に行われ、6度目の出場となった創価大学が総合8位(往路10位、復路4位)に入り、4年連続でシード権を獲得した。総合記録は10時間55分55秒。前回大会を35秒上回った。7区の葛西潤選手(4年)が区間賞に輝いた。
 

攻め抜いた! 創価の「強さの証明」

午前8時、東京・大手町の空に号砲が鳴り響くやいなや、色とりどりのユニホームに身を包んだ21人の選手が一斉にスタート。10区間217・1キロにわたる感動のドラマが始まった(2日)

 いくつもの逆境をはねのけ、第100回大会のシード権をつかみ取った努力と執念のタスキリレー。
 
 それは、4年生を中心に、最後まで諦めずに攻め抜いた創価の「強さの証明」だった。
 
 2日午前8時。気温4・9度の澄み渡る青空の下、東京・大手町の読売新聞社前で、全21チームによる往路5区間107・5キロの開始を告げる号砲が鳴り響いた。
 
 多くの観衆の拍手と応援団のエールを背に受け、創大の1区は横山魁哉選手(4年)が出走した。
 
 レースは序盤から創大などが2位集団を形成。19キロ付近で明治大学が先頭に飛び出したが、横山選手は集団の中で我慢の走りを見せる。
 
 「足が止まりかけるほど苦しい場面もありましたが、粘り強く走り続け、得意のラストスパートを発揮できました」
 
 そう振り返った最初で最後の箱根路で、区間5位をマーク。トップと18秒差で鶴見中継所に入った。

創大の先陣として区間5位と快走した1区・横山選手㊨が、2区・ムルワ選手にタスキを手渡す(2日、鶴見中継所で)

 1区から良い流れでタスキを受けたのは、ケニア人留学生のフィリップ・ムルワ選手(同)。各大学のエースが名を連ねる「花の2区」を3年連続で託された。
 
 ムルワ選手は10キロ過ぎで3位を走る明治大学をとらえると、青山学院大学など上位チームと併走。戸塚中継所まで山梨学院大学の留学生と競り合い、5位をキープした。 

区間6位の執念の走りで5位を守り抜いた2区・ムルワ選手㊨から、3区・山森選手へ(2日、戸塚中継所で)

 3区は箱根初挑戦の山森龍暁選手(3年)。途中、他大学に抜かれる場面もあったが、落ち着いてペースを刻み、首位と2分14秒差の6位で4区・嶋津雄大選手(4年)にタスキリレーした。

序盤から攻めの走りを貫いた3区・山森選手㊨が、4区・嶋津選手へ思いを託してタスキリレー(2日、平塚中継所で)

 集大成のレースで3年連続の4区を任された嶋津選手。3週間前に足首をひねり、調整を続けながら本番を迎えた。
 
 沿道の応援、切磋琢磨してきた仲間たちの思いを力に変え、“魂の走り”を見せる。残り5キロ以降、右足に痛みを感じながらも7位で小田原中継所に駆け込み、5区の野沢悠真選手(1年)にタスキを手渡した。

区間8位と力走した4区・嶋津選手㊨からタスキを受け取る5区・野沢選手。応援を力に、箱根の山を駆け登った(2日、小田原中継所で)

 初めての箱根で難関の山上りに挑んだ野沢選手は、最後まで懸命に腕を振り、シード圏内の10位で神奈川・芦ノ湖にゴールした。
 

4年生の意地 往路10位からの猛追

創価大学のチアリーディング部「パンサーズ」らが、応援エリアから6区・濱野選手に力強いエールを送る (3日)

 復路(5区間109・6キロ)は3日午前8時、芦ノ湖から往路1位の駒澤大学が6区をスタート。
 
 創価大学は想定通りのレースとならなかった往路からの反転攻勢を誓い、駒大の6分5秒後、濱野将基選手(4年)が力強く出走した。
 
 3年連続の6区となった濱野選手は“山下り職人”の本領を発揮し、序盤から攻めの走りで前を猛追する。
 
 5キロ付近で9位に順位を上げると、下りで一気に加速。17キロの函嶺洞門で7位に。さらに小田原中継所の手前で6位に浮上した。
 
 「ラスト3キロが本当にきつかったですが、4年生の意地を見せることができました」との言葉通り、4人を抜く区間4位の好走でチームに勢いを与えた。

3年連続の6区・山下りで4人を抜いた濱野選手㊨から、同級生の7区・葛西選手へ(3日、小田原中継所で)

 苦楽を共にした同期から最高の形でタスキを受けた7区の葛西選手。出走前、「区間新と区間賞を狙います」と語った創価のエースは、区間記録を上回るハイペースでレースに入り、3キロ手前で順位を5位へ押し上げる。
 
 中盤以降は苦悶の表情を見せながらも追走を続け、4位まで27秒に迫る激走で平塚中継所に入った。
 
 「3週間前にけがをしてしまい、一度は箱根を諦めかけました。でもギリギリまで待ってくれた監督、そして支えてくれた方々に応えたい一心で出場を決めました。本調子ではありませんでしたが、チームの流れを良くできて、うれしく思います」と葛西選手。1時間2分43秒で区間賞に輝き、後続にタスキを託した。

区間賞の激走でチームに流れを引き寄せた7区・葛西選手㊧が8区・桑田選手へタスキをつなぐ(3日、平塚中継所で)

 先輩たちがつくった流れを8区で引き継いだのは、3年の桑田大輔選手。前回の3区で区間17位と悔しさを味わった分、今回はリベンジに燃えていた。
 
 落ち着いたリズムで前を追うが、15キロ過ぎで足がつり、苦しい展開に。それでも最後は足を叩きながら執念で走り切り、6位で戸塚中継所へ。桑田選手は創大の8区最高記録(前々回)を3秒更新するタイムをマーク。3位と15秒差まで詰める好走だった。

4年生への感謝を込めて走り抜いた8区・桑田選手㊨から、タスキを受けた主将の9区・緒方選手がさっそうと(3日、戸塚中継所で)

 9区にエントリーされた主将の緒方貴典選手(4年)は、3キロ付近で3位グループの4大学に追い付くと、集団の先頭に。8キロ過ぎで後ろから追い上げてきた青山学院大学に3位を譲るが、必死で食らい付いた。
 
 終盤、最後の力を振り絞り集団から抜け出す。8区から順位を2つ上げ、4位で鶴見中継所に飛び込んだ。
 
 「出場できなかった4年生の思いを胸に、中学時代から目指していた舞台で攻めの走りができました」
 
 緒方選手は、最初で最後の箱根を区間2位という見事な結果で飾り、最終10区にタスキをつないだ。

区間2位の好走でチームを4位に押し上げた9区・緒方主将㊨。笑顔で10区・石丸選手にタスキを渡した(3日、鶴見中継所で)

 創価のアンカーは石丸惇那選手。1年生ながら今季の「大学三大駅伝」の全てで出走を勝ち取ったホープは、負けじ魂を燃やしてゴールを目指し、総合8位で大手町のフィニッシュテープを切った。
 
 創大の復路記録は5時間26分40秒で堂々の4位。駒大が往路・復路とも制し、総合優勝を果たした。
 
 大会を振り返り、榎木和貴監督は語った。
 
 「けがなどもあり、万全な状態ではない中で、4年生全員が区間順位を一桁でまとめてくれたのは大きかった。次回の箱根を含め、来季も三大駅伝の挑戦権は獲得できましたので、新たな歴史を刻めるチームを一から強化していきたいと思っています。2日間の応援、本当にありがとうございました」

スタート地点に響き渡る創価大学パイオニア吹奏楽団の演奏が選手たちを鼓舞する(2日、東京・大手町で)