〈未来部育成のページ〉総兵庫少年少女オンライン合唱祭

笑顔と歌声が平和の力に

 総兵庫の友に歓喜と感動が広がった。兵庫県内全ての少年少女合唱団の代表メンバーが出演した合唱動画が先月、完成したのだ。

 これは「総兵庫少年少女オンライン合唱祭」として昨年11月に開催を発表し、各合唱団で出演を希望したメンバーの歌動画を集めたもの。総県ごとに即席の合同合唱団を作り、歌声を披露した。編集は各種会合の音響役員と映像制作を担当する「関西文化班」の男子部員8人が手掛けた。

 合唱祭の映像では最初に「My dream is your hope ~私の夢はみんなの希望~」とのテーマで、代表メンバーが教師や看護師、ゲームクリエーターなど将来の夢を発表。続いて司会から各総県の合唱団が紹介されていく。

 歌の前には代表メンバーの活動報告と曲目紹介が。“摂食障害を乗り越えて、皆の前で元気に披露するという夢がかないました”“コロナ禍に音楽の力で励ましを送りたい”など、披露される歌にはメンバーの特別な思いが込められている。

 全部で1時間弱の映像には、10の合唱団、約500人のメンバーが登場する。その明るい笑顔と歌声に、動画を視聴したメンバーや家族の感動と喜びはひとしおだった。

活躍の機会を

 総兵庫には圏や県単位で少年少女合唱団がある。団員数や入団生の学年などもそれぞれで異なり、地域の実情に応じた活動をしている。そこで3年前から「総兵庫少年少女きぼう合唱祭」を開催し、合唱団同士の触発と成長の機会を設けてきた。

 しかし、昨春の緊急事態宣言以降、歌の練習が中止に。入卒団式やファミリー総会など、メンバーの歌声を披露する場もなくなってしまった。

 「どうすればメンバーに信心の思い出をつくってあげられるだろう」――スタッフや未来部担当者は悩み考えた。
 ある合唱団の団長はオンラインでの会合や練習を考えたが、保護者の協力、端末の操作、家庭の通信環境などを考慮すると、実現は困難ではないかと思いあぐねていたという。

 だが、保護者からは「子ども同士の信心の触れ合いができないか」「活躍の機会をつくってほしい」との声も寄せられるように。

 こうした状況に、総兵庫の少年少女部として“オンライン合唱祭”を検討。実現が可能か感触をつかもうと、まずは各合唱団でオンラインの入団式やディスカッションを秋に開催することを提案した。

 結果は約8割の合唱団がオンラインの会合を開催。スタッフや保護者の多くがオンラインでの合唱団運動に手応えを感じた。“オンライン合唱祭”についてのヒアリングでは、賛同の声が多く寄せられ、11月、開催が決定した。

努力の結晶

 練習が始まると、活気にあふれるメンバーの様子が各地で聞かれるようになった。

 少年少女部のリーダーやスタッフも喜びを胸に、開催の連絡、楽譜や音源の準備、そして出演メンバーの励ましにと奔走した。撮影方法や歌い方を伝えようと、西宮総県では撮影の注意点を説明した動画を作成。合同で出演することになった明石総県と北兵庫総県は、オンラインで合同練習を行うなどの工夫もした。

 保護者も懸命に応援した。合唱団の練習がないため、家での“歌の先生”は保護者が。専門的な歌唱指導はできなくても、子どもと一緒に歌詞を覚えたり、ハモりの練習をしたりと陰で支えた。

 そして何よりも、メンバー自身の頑張りが光った。歌動画では、集めた歌声を一つにするため、歌詞やメロディー、テンポを間違えないようにしないといけない。そのため、メンバーはより正確に歌うために練習を重ね、中には何度も撮り直し、涙ながらに挑戦したメンバーもいた。

 視聴者からは「皆さんの純粋な思いが伝わってきて胸を打たれました」「コロナでうんざりしていた気持ちが、晴れやかになりました」との感想が。皆の汗と涙がしみこんだ歌動画は、“希望の傑作”として、多くの友に前進のエネルギーを送った。

成長の飛躍台

 “オンライン合唱祭”は出演したメンバーにとって、成長の飛躍台となった。

 十倉大和君(北兵庫総県、5年)は総兵庫の合唱祭では歌は初披露。「人前で何かをすることが苦手だったけど、お父さんが映像を見て『皆の前で歌えてるやん』と喜んでくれました。祈って、合唱を頑張ってよかったです」と、笑顔を見せた。所属する合唱団からは7人が出演し、念願だった団としての合唱祭出演を実現することもできた。

 大西優那さん(西神戸総県、5年)は、今まで歌が苦手でバスケの練習を優先してきた。しかし、今回、勇気を出して歌動画に挑戦。20回も撮り直した映像が思った以上の出来栄えとなり、「これからは合唱団に積極的に関わっていきたい」と、決意した。さらに、がんと闘う祖母にその頑張りを伝えると、祖母は喜び、勇気と元気を送ることができた。

 三膳珂音さん(姫路総県、6年)は練習に励んでいた頃、同級生からの陰口に悩んでいた。だが、母に紹介された池田先生の言葉に勇気が湧き、その同級生と対話。心を通わせることができた。「この経験を通して、クラスの友だちとの関係を深めることができてよかったです」と、成長を実感していた。

 合唱祭には、障がいがあり、普段は合唱に参加できないメンバーも出演。リズムを感じる朗らかな表情が、多くの人に勇気を送った。

 こうしたメンバーの姿に、オンラインでの合唱団運動を検討し始めた合唱団もあり、今、新たな後継者育成の挑戦が始まろうとしている。

 筒井健一総兵庫少年部長、西馬明佳同少女部長は語る。
 「子どもたちの笑顔と歌声は人々の心を動かし、一つにする平和の力です。池田先生の心を皆に伝え、勇気と希望の励ましを送っていきます」

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