負けじ魂と価値創造の一年
卒業を迎えた東京高51期・関西高46期は、2018年の高校入学時に創立者・池田先生から、「栄光のパイオニア1期生」との指針を贈られた。その原点を胸に、開拓者の誉れ高く、負けじ魂で走り抜いた3年間。高校生活の総仕上げをした2020年度の軌跡を紹介する。
1学期(4~7月) 一人じゃない

コロナ禍で2月末から一斉休校が続いていた2020年4月、友人と直接顔を合わせられないまま、オンライン授業が始まった。当たり前の日常が大きく変わる中で、東西の高校3年生は、最高学年としての一歩を踏み出した。
当初は登校できず孤独感が募ったが、SNSを活用して連絡を取り合い、同じ志を持って勉強や自身の課題に挑む友の姿が励みになった。“一人だけど、一人じゃない”――創立者・池田先生のもとに集った学園生の絆を強く感じた。
6月、分散登校が開始。一年の中で最初の記念行事である、7・17「栄光の日」の実行委員の生徒は、その時期から画面越しに話し合いを重ねた。
7月初旬には、一斉登校が始まった。移り変わる状況、さまざまな制約の中で、できることを真剣に考え抜いた。「栄光の日」は、創立者の精神を学び、成長を誓い合う伝統行事。その精神を“途絶えさせてなるものか”と決意した。
東京高の中心者の3年生は振り返る。「先行きの見えないコロナ禍の中で、『負けじ魂』の意味を知りました」
オンラインや動画を活用し、学年を超えた対話や創立者の指導の研さんなどを行い、7月17日を迎えた。
例年は一堂に会する行事だが、今年度は各教室にオンラインで配信する形で実施。池田先生は“苦難の運命さえも不屈の創造のバネに”とメッセージを寄せた。創立者の言葉が自分たちの奮闘と重なった。
「どんな状況でも、価値を創造できる人に成長しようと決めました」(関西高3年生)

2学期(9~12月) “新しい道”を
いつもとは違う夏休みが明けた。学友と会うと、マスク越しでも心が弾む。朝に交わす「おはよう!」のあいさつ一つも新鮮で、とても大切なものだと皆が気付いた。
2学期には、三大行事の一つ、10・10「情熱の日」の準備が始まった。東京高は学園祭、関西高は競技大会の実施を通して、団結を強め、その“情熱の姿”を創立者に届ける大切な場である。
感染防止に努めつつ、何ができるか――手探りで可能性を見つける話し合いが続いた。“例年と同じように開催はできない。だからこそ、自分たちが新しい道をつくるしかない。価値創造の挑戦をしよう!”と約し合った。
迎えた行事当日。東京高は、学園祭の特設サイトを開設し、オンラインを中心にして実施。関西高は、競技の形態やルールを工夫し、無事故の大会運営を成し遂げた。困難を乗り越えて一段と団結を強めた姿を、創立者に届けることができた。


次に臨んだ行事は、11・18「創価学園創立記念日」を祝賀する「英知の日」。
生徒たちは10月下旬から、創立の精神を学び深める研さんや対話運動を実施。東京高では、同じクラスの仲間だけではなく、学年を超えた交流の場も持った。コロナ禍の中で実現した、先輩と後輩の語り合い。喜びは格別だった。
その対話の集いでは、3年生が後輩たちに率直な思いを語った。「必ずいい方向に変わっていけるよ!」――研修旅行が中止になり、一番悔しい思いをしたはずの3年生が、1・2年生に寄り添い、温かく励ましを送る。共に困難を乗り越え、絆を強めた学友のつながりこそ学園の誇りと語る3年生もいた。
どんなことがあろうとも、負けじ魂を燃やして朗らかに前進する3年生の姿は、後輩が“自分もこういう先輩になりたい”と思う模範の学園生そのものだった。
「英知の日」当日。創立者が贈った卒業指針が発表された。
わが無上の誇りの君よ
艱難に勝る教育なし
不屈の探究で
勝利の鐘を打ち鳴らせ!
地球を結ぶ
価値創造の連帯を!
“この指針の通りに卒業まで走り抜こう!”――卒業生の胸に誓いが刻まれた。
3学期(1~3月) 創立者と共に
いよいよ3学期。卒業式の「3・16」が近づく。
この一年、多くの挑戦を重ねてきたからこそ、1月の緊急事態宣言の再発令にも、もう戸惑うことはなかった。
学園を巣立つ一人一人が、どんな思い出を残すか、どう行動するか――2月、関西高では「3・16」当日の自分に、そんな思いを込めて手紙を書いた。放送室から映像を中継して、友人への感謝や、未来の自分へのメッセージを紹介する朝集会「朝かライブ」の取り組みも開始した。
3月に入ると、東京でも関西でも、多くの生徒がこんな会話を交わした。
「できなかったことは多かった。けれど、とにかく悩んで、全力で挑んだからこそ、本当に楽しかった!」「コロナ禍だからこそ、大きく成長できた今があるよね」
東西の卒業実行委員長(東京=董福煌さん・髙井由香さん、関西=仲井壮汰さん・武田美由紀さん)は一年を振り返り、笑顔で語る。
「創立者・池田先生がいつも見守り励ましてくださったから、この一年を負けずに進んでくることができました」
「栄光のパイオニア1期生」、そして、全ての学園生にとって、この一年は、“コロナ禍という危機に見舞われた、失われた一年”ではない。負けじ魂の炎を燃やし、価値創造の学園建設に汗を流した、“かけがえのない宝の一年”となった。
◆クラブ活動の一年

コロナ禍の一年は、部活動においても、多くの各種大会やコンクールが中止になった。悔しさを抱えながらも、学園生は負けじ魂を燃え上がらせ、前進を続けた。
東京高・硬式野球部。夏の甲子園が中止になった時、一晩泣き明かす選手もいた。
代替大会の実施が発表された時、選手たちは、大会に挑む意味を話し合い、「感謝」をテーマに掲げた。支えてくれた人たちや、大会が中止になって引退した他のクラブの友の思いも背負った。恩返しの思いで西東京大会に臨むと、チームは勝ち進み、ベスト4の結果を残すことができた。
主将を務めた河合圭聖さんは力強く語る。「逆境があるからこそ成長できました。かけがえのない仲間との絆や創価高校の野球部で戦えた誇りを胸に、次の舞台で勝利していきます」

関西高・吹奏楽部の友は、夏の大会の中止が5月に決まり、悔し涙を流した。
そんな中、日本管楽合奏コンテストの開催が決定。夏ごろから本格的に活動を再開した。大人数での“合わせ練習”がなかなかできなかったが、“皆に希望を届けよう”と心を一つにして猛練習を重ね、秋の予選(録音審査)に臨んだ。結果、予選を突破し、11月の全国大会(動画審査)へ。そして、全国の舞台では「優秀賞」を受賞した。
部長の藤原由香さんは振り返る。「苦難があっても団結して前に進めたのは、創立者や多くの方々の支えがあったからです。今後は、その恩返しができる自身に成長していきます」

