〈創価大学駅伝部2021-2022 vol.1〉榎木和貴監督にインタビュー2

 今年の箱根駅伝で初の往路優勝、総合準優勝に輝いた創価大学駅伝部は、新チームが始動し、来る全日本大学駅伝の関東地区選考会に向け、鍛えの汗を流す。榎木和貴監督に新チームについて聞いた。

 ――新春の“創価旋風”から3カ月。チームの雰囲気を聞かせてください。
  
 新主将に三上雄太(4年)、副主将に永井大育(同)が就きました。三上は全体を見渡してチーム状況を冷静に分析し、一人一人に寄り添えるリーダーです。逆に永井は積極的に発言するタイプ。力を合わせてチームを引っ張ってほしいです。
  
 今、2人のように箱根を走った選手だけでなく、エントリーされなかったメンバーに勢いがあります。“次は自分が箱根を走るんだ”との思いが、練習への姿勢、練習以外での体のケアや体幹の強化などへの意識に表れています。彼らの姿がチーム力の底上げにつながっています。

創価大学駅伝部が始動!――三上主将(中央)が集団をけん引。2、3年生も着実に実力を伸ばし、チームの選手層に厚みが増す(東京・八王子市の創価大学池田記念グラウンドで)

競技力と人間力の向上 速さの先の「強さ」を目指して

 ――新チームに求めるものは?
  
 前回の箱根駅伝(2020年)では、シード権を獲得したという「自信」が、その後のレベルアップに結び付きました。今年は準優勝校としての「自信」に加え、「プライド」が生まれたように感じています。この二つが彼らの行動を変えています。
  
 1月末、最初の全体ミーティングで話したのは、「競技力の向上」とともに「人間力の向上」を目指そうということです。
  
 結果が出たから何をやってもいい、と勘違いすると、足をすくわれて急激に力が落ちていく。箱根駅伝で総合優勝するチームをつくるには、人間力の向上が不可欠であると思います。これはスタッフ全員に共通した考えです。
  
 また選手たちには、「強さ」を求めてほしいと訴えました。それは、どんな舞台でも自分の実力を最大に発揮できるための速さ、環境適応力、精神力などを総合した「強さ」です。
  
 今年の箱根駅伝では、試合展開に応じた走りで「強さ」を証明してくれました。一方で、その「強さ」のレベルをより高くしなければ優勝はできないことを痛感した大会でもありました。
  
 試合で流れが崩れても勢いを引き戻せる選手、駅伝だけでなく1万メートルなどのトラック種目で結果を残せる選手を出していきたいです。

春のトラックシーズンに向けて、鍛錬を重ねる選手たち(同)

 ――今年は出雲駅伝(10月)に初出場が決まり、全日本大学駅伝(11月)は地区選考会からの挑戦です。大学三大駅伝での活躍に期待が高まります。
  
 今年の目標は、出雲駅伝と全日本大学駅伝で3位以上、箱根駅伝で総合3位以上です。もし出雲駅伝と全日本大学駅伝で3位争いができれば、箱根駅伝の目標を「総合優勝」に上方修正できます。三大駅伝の全てで3位以上の結果を残すことが、創価の「強さ」の証明になります。
  
 4月から6月の課題は、どれだけスピードを上げられるか。昨年同様の月間走行距離で“脚づくり”をしつつ、主力の選手には、エースのムルワ(3年)と同じ練習に取り組ませ、日本人と留学生で切磋琢磨してレベルアップを図ります。これまで経験したことのない年間スケジュールになりますが、いい意味で楽しみながら箱根駅伝につなげていきたいです。

箱根駅伝準優勝の立役者の一人、嶋津雄大選手が先頭で引っ張る(同)

目標の共有が真の団結を生む

 ――チームや個人の目標を立てる上で、監督が心掛けていることは?
  
 チーム目標を設定しても、主力から1年生、マネジャーを含め、全員がそこに向けて走りださなければ、チームは前に進みません。だからこそ「目標の共有」を徹底しています。
  
 個人目標は高すぎる数字ではなく、現実的に到達できそうな目標を掲げ、“この時期には、ここまでのタイムを目指そう”という段階的な見通しを立てます。そのためには、目標への「行動」と「プロセス」を教えることが大事です。走行距離をはじめ、練習前の準備や体のケア、体重や食事の管理など、全てを競技と関連づけるように助言しています。全員が、チーム目標と個人目標の達成を、日ごろの取り組みや行動に落とし込んだ時、チームに真の団結が生まれると思います。

一歩一歩の積み重ねが、勝利への道につながる(同)

 ――監督から見た「伸びる選手」の特徴とは何でしょうか。
  
 やはり、コツコツと真面目に取り組む選手です。自分のやるべきことを信じ、徹底して継続できる子は、必ず結果に結び付いています。
  
 私は走りの技術やセンスのあることだけが才能だとは思いません。今年の箱根駅伝で1区3位の福田悠一(OB)、9区区間賞の石津佳晃(同)は入学当時、決して高いレベルの選手ではありませんでした。でも、地道に取り組める才能があった。彼らをはじめ今回の選手たちの走りは、まさに努力の証明になったと思っています。

練習メニューを一つ一つ確認する吉田正城主務㊥らマネジャーたち。陰の戦いでチームを支える(同)

 ――新チームのスローガンは「獅子奮迅――ストライプインパクト」。スローガンに込めた思いと、この一年の決意をお願いします。
  
 「ストライプ」は、創価大学の象徴である、赤と青のユニホームのことです。「インパクト」には、英語で「衝撃」などの意味があります。再び多くの方々に強烈な印象を与える走りを見せ、「今年も創価は強い」と言ってもらいたいという思いを込めました。
  
 選手たちはたくさんの応援を力に変えて成長を続けています。創価の赤と青の「ストライプ」のユニホームが、日本中に歓喜と感動の「インパクト」を届けられるよう、焦らず、地に足をつけて練習に取り組んでいきます。

榎木監督㊨と三上主将が練習での走りを振り返る(同)